遊園地帰りの家族が多くて騒がしいくらいの人混み。
流れに乗るように少し歩いて大きなビルに入る。

地下のレストラン街は種類が多すぎて悩む。

少し並んでたけどお好み焼き屋さんの列に並んで座った。
滅多に家では作らない。
得意だと言う大場に任せる。

焼けるのをじっと見つめながら、ついつい前のめりになったらしい。

「譲、鼻の穴火傷するよ。」

「はぁ?」

顔をあげると自分が本当に前傾になってたのが分かる。

「なんか食べ物に視線を向けるとどこまでも近寄るんだな。あんまんが冷める前に俺が食べられるかと思ったし、あんな人ごみで、恥ずかしかったなあ。」

忘れたい。
姿勢を戻して誤魔化すように聞いた。

「何で鼻の穴なのよ?」

「なんか吸い込みがすごそうで、鼻息が期待を表してそう。火傷するなら顎より鼻の穴かも。」

「しません。」

そんな微妙なところの火傷ってなに?
自分でテイッシュを詰めてる鼻を鏡で見てる映像が浮かんだ。
色気の前に、可愛くもないじゃない。

話をしながらも切り分けていく大場。

青のりを手に取って傾ける前に・・・戻した。
これ以上落ちをつけたくない。

その思いに気が付かれたのか思いっきり笑われた。

代わりに鰹節を振り。
小さく切りながら食べる。

鉄板が熱いのでお店全体が暖かい。

久しぶりに食べるお好み焼きは美味しい。

「どう?俺の作ったお好み焼き。」

「美味しい。器用だね。」

「母親が関西人なんだよ。小さい頃から仕込まれた。兄貴よりうまいかも。」

「お兄さん、どんな感じの人?」

あんな美人さんの相手をする人だし。もしかしてすごいかっこいい?
見たいなあ。さすがに写真はないよな。

「俺とそっくりだけど。ちょっと細い。神経質っぽい。でも顔は似てる。義姉んもそういう。絶対兄弟だって分かるって。」

そう言われてじっと顔を見る。
少し細めに、神経質そうに、とイメージの中でいじる。

「いい男だろう。自慢の息子たちだからな。」

勝手に言われた。

「そうなんだ。」平坦に応える。

「その内紹介するよ。義姉さんに聞いてるから興味あるみたいだし。」

ん?

「ねえ、そういえば何を言ったの?」

「は? 別に、義姉さんに聞いてたんだろうから、あの日の次の日に報告してお礼言ったら、連絡が来て。おめでとうと、その内紹介しろと言われてたんだけど。」

「勘違いしてたことともか知られてるの?」

「そりゃ、そうだろう。劇的ポイントだよ。」

「そんな・・・・・。」

「譲はいいよ。俺なんかずっと観察されてたんだから。絶対報告されてる。本当に秘書課の情報の集約力凄いから。」

は~、しょうがない。
ちゃんとお礼言いたいし、お兄さんも興味ありあり。

いまさらどう頑張っても女性としては天地の差。

それはしょうがない。