お腹いっぱい。
さすがに口の中が甘い。
明るい大きなメインの通りを歩き、Uターンして、海の方へ歩く。

いくらか薄暗くはなっているけど、まだまだライトアップはされてない景色。
ベンチはやはり夕暮れを待つカップルでいっぱいで、手すりの近くを歩く。

大道芸の人もいて、ちいさな輪を作る。
外側からのぞき込む。

音楽を鳴らして、道具を器用に使い、お客さんとの会話でテンポよく進めていく。
その時々の一瞬は一発勝負。
真剣になって技を披露して、成功の拍手とともに緊張が解ける。
思わず一緒に拍手する。

最後に出された帽子の中にお金を入れて。

遠くに見える大きな輪。ゆっくり回ってる。
あと一時間くらいしたら、きっと明かりがつく。

立ち止まった私の横に同じように立ち止まる大場。

「さっき、本当にあんまんしか見てなかったよな?」

さっき・・・多分、あんまんにぞっこんでした。
湯気を見てました。少し冷めて、食べごろを待ってました。
でも大きなあんまんを掴んだ手の指も見てました。
さっきまでつないでた手でした。
大場が両手に持ってたから、手を離された私はただ、くっついてたのかもしれません。
半分にして二人で食べる。
それがしたかった。大場と。


「何?言って。」

「大場と半分にして食べたかった。」

「あんなにくっついて?」

「・・・・それは記憶にない。」



「そろそろ並んだほうがいいかな?飲み物買って、交代でトイレに行って、結構並ぶだろうから。」

笑顔で言われた。
あんまんの時のことはいいらしい。


「大場は誰と乗ったことがある?」

振り向かれた顔は、普通の顔で。

「初めて。」

「・・・・嘘。」

「ないよ。男と来て並ぼうと思ったけど、ほぼカップルか女子。結構なお金出して並んで野郎と乗るまでもないと誰かが言い出して、乗らずじまい。そう言うんだったら譲は?」

「友達と四人で乗ったことがある。広いんだよ。」

「ダブルデートとか?」

「女の子四人。写真撮りまくって、はしゃいでるうちに終わってた。隣のゴンドラでカップルがキスしてたのを見てるのもなんだかで。」

「そりゃあ、するでしょう。多分一番高い所で。」

「・・・・・。」

別におねだりしたつもりはないです。
そう宣言するように言われると困る。

気になるじゃない。