いろんな出会いがあった。
海があり、山があり、陸が離れていても、空はつながってる。
風が吹けばすぐにたどり着く。

確かにそうだ。
文明や宗教の差なんて、そんな自然には敵わない。



それなのに、一人でいる部屋は寂しい。
小さな満足はたくさんあるはずなのだ。
彼女の服を触り、笑顔を思い出し、声を思い出し、触り心地まで思い出せるのに。
なかなか満足できない自分は、まだ何も捨てられないのだ。

メッセージをやり取りして、また少しの満足を足して、ようやく落ち着いた。


自分はまだまだ、ああいう風にシンプルには生きられない。
前歯のあるうちは無理だろう。


いろんな人の中でも親切に数日泊めてくれたところがあった。
アメリカのサンフランシスコの湖の近くの家だった。
湖の写真を撮っていて声をかけられた。
退職したばかりの大学の先生だった。
そのまま家に呼ばれて。
子どもが使っていた部屋を自由に使わせてくれた。
すっかり三食を共にして、日中も話をして、散歩をして、家の庭いじりをしたり、買い物をしたり。
ちょうどいい暇つぶしの相手のような存在。

時々手紙を送ったり、小さなものを送ったりしている。

今も元気そうで何よりだ。


今日は懐かしい人の顔が浮かぶ。
ベッドに横になり、彼女の匂いを探しながらも浮かんでくるいろんな人の顔を懐かしみながら眠った。