それでも約束は守る男だった。
優しくキスはされても印をつけたのは胸そのものと太もも辺りだった。
朝、シャワーを浴びて確認した。
ため息をついたけど、甘い息だった。

今日は帰ろう、部屋に帰ろう。
来週にはまた恒例の山がやってくるから、ゆっくり休もう。

荷物を見下ろして考える。
どうしようか。

「どうした。」

声をかけてきた大場はすっかり準備が整ってる。

「この荷物。今日は部屋に帰る。冷蔵庫の中もちゃんとしないと。あと、来週は忙しい山だから、今日あたりからじわじわ来ると思う。」

とりあえず借りていた鍵をテーブルに置く。

「ありがとう、これ。」

それを見て大場が残念そうな顔をした。

「荷物は置いていってもいいし、洗濯物もちゃんとしておくから。カギはあげる。週末は一緒にいたいし、いつでも来ていいから。」

そう言って鍵は渡された。

「ねえ、ここは、誰か来たことあるの?」

「ない。譲が初めて。あえて言うなら、母親が一回だけ。」

母親はノーカウントでいいです。
大場を見上げながらも、自分が何を聞きたいのか、本当に聞きたいのか・・・・。

「準備すれば?聞きたい事はまとまったらいつでもどうぞ。荷物も仕訳けてください。」

そう言われて鍵はまた私のバッグのポケットに入れられた。
自分の部屋の鍵が入ってるところ。
小さく狭いポケットの中でくっついてるかも。

洗面台で化粧を仕上げて、着替えて。

「行くか?」

「うん、じゃあ、これだけはここに置いておいて。」

「ああ、譲の代わりに抱いて寝るから。寂しくないよな。」

ニヤリと笑われた。

「ファスナーに噛みつかれないように気を付けて。」

「そうだな、誰かも結構暴れてじっとしてないからな。持ち主に似るかもな。分かった、気を付ける。」

うぅぅ・・・。負けた気がする。

手をつないで駅まで歩く。