「只野さんごめんね、大場から『好きな奴』『ユズル』っていう愚痴のような相談を聞いたときは男の人かと思ってて。しばらく誤解してたんだ。冗談交じりに『ライバルがキンタロー』まで聞いたら、そう思うよね?」

キンタロー???
実家の柴犬と同じ名前・・・・?
他には、誰?


話しは二人の間で進む。

「研修の日の夜、電話で会いたいって言ってたって?幼馴染って可能性もあるしとかなんとか言ってたよな。」

「そういえばそんな事も言いましたね。」

「だよね。あの時はマジで誤解してた。さりげなく彼女持ちだとアピールしたけど、気が付いた?」

「ただの自慢だと思ってました。それと、そんな応援の仕方なんだと。そう言う目で見られてたとは初めて聞きました。」

大場が明るく笑う。

「中村さんも、昨日突然だったのにありがとう。」

大場がみゆきの方を見て言う。

「私は全くの初耳でした。酷くないですか?信頼ゼロみたいです。」

「みゆき・・・そんな・・・・・。」

「嘘嘘。もういいから。今度奢ってもらう予定だから。」

他の人が入ってきて、ふたりが休憩を終えた。

「じゃあね。2人とも。」
軽く挨拶をして澤部さんが出て行く。

「じゃあ、いろいろよろしく。」

大場は私を見た後みゆきを見て言った。

「万事了解。」

満足げに笑って、もう一度私を見て出て行った。

「何をお願いされたの?」

「いろいろ。」

面白そうな顔になるみゆき。

「まあ、先輩のこともあるし、気になるんでしょう。譲のいろいろが。」

小声で言われた。

そんな会話だったの?

それに今初めて知ったけど、研修の時の電話をはっきり聞かれてたんだ。
いつから聞いてたのよ。
終わってから声かけられるまで時間があった気がするけど。

キンタロー、会いたいなあ。
本当に夏以来会ってないから。
声だけなら電話口で聞いてる。
元気そうだし、まだまだ若いから心配ないけど。


「譲、あんまり男の人と話をする時に見つめてばっかりじゃあ、本当に怒られるよ。」

みゆきにそう言われた。
大場にも喋ろと言われて気が付いた。
じっと見てたから。
いろいろ考えてたのに、視線は顔に固定されてたんだろう。

「気を付ける。」

「珍しい癖だよね。最初私もビックリした。ずっと見つめられて、何だろうって。今はすっかり慣れたけど、でも半分くらい考えてることが分からない時がある。」

半分?
大場とは結構会話が進むけど。
みゆきとも、まあ不自由はないよ。合ってるよ。
でも声に出そう。できるだけ。みゆき相手から練習しよう。