あれから何度も自分は思い出している。
何もなくても、何かあっても、思い出してる。


今も目の前にあの時と同じ目をした彼女がいる。
少し落ち着いた風に見えるのは気のせいだろうか?

つい、引き込まれるように顔を近づけてしまった。
自分でもびっくりして、急いで内緒話の様に聞いていた。

「彼氏はいるの?」

「いません。」

即答だった。
同時に眉間にしわが寄り不快な表情が見て取れた。

明らかに失敗だった。

「そうなんだ。」

安心した気持ちは隠した。
でもそう思っていた。何となくわかる。多分いないだろうって。
そう思った気持ちが口から出てしまった。

「でも、なんとなく分かるかな・・・・・。」

「そうですか、確かにその気も今はまったくないので。」

そう答えられたときには思わず顔を見た。
怒らせてしまったらしい。

「そうなんだ。せっかく男もたくさんいるのに。」

いま、目の前に。
ニッコリと笑ってみたのだが。

「社内恋愛する気はないですから。」

そう言って席を立たれてしまった。


ああ・・・・。撃沈。
今自分はただのデリカシーのない男に成り下がっただろう。
どうしたらいいだろうか?


しばらくして帰ってきた彼女は決して笑顔を向けてくれず、じっと見つめてくることもなかった。

その日はそれで終わってしまった。
最悪だったかもしれない。