本当に美人だった。

兄もイケメンで通用するくらいではある。
二人並ぶとお似合いだ。


実際働き始めても社内では見かけることは少ない。
働いてるフロアが違うから。
秘書課は偉い人のいる上の階だ。
下々の平社員は下の階でバタバタと働いている。



そんなある日、社内の飲み会に誘われた。
少しの期待を持って参加したら、端の席に見かけた。


同期で新人研修の時に気になった子が参加していた。
端の席で、向かいに知らない先輩、横と斜めは同じ課の人らしい。
1人は同期だとすぐに分かった。

笑顔で話に参加してるらしいのを横目で時々確認する。
そこに行きたいのに。せっかくのチャンスなのに。

ただ、・・・・・・何でですか?早紀さん。
その一つ隣にいたんじゃ、アプローチできません。
身内の目先ではさすがに・・・・。


まさかこんな類の受難があったとは。


彼女が一人で席を立ったタイミングを見て、少し時間をおいて自分も立った。
外で話しかけるチャンスがあるかもしれない。
そう思っての行動だったのに、横にいた佐々木が自分につられて一緒についてきた。

何でだ・・・・。
後ろからしきりに話しかけてくる。
しかも早紀さんの話をしてくる。

「なあ、凄いよな、美人過ぎてまぶしい。」
やや興奮気味に言う。
それからも妄想を膨らませた話までしだして。

いっそ急に下痢にでもなってくれ。
トイレに走って行け、行ってしまえ。

そう願ったのにご機嫌で同じペースで歩く佐々木。
前から彼女が歩いてくるのが見えた。

早い・・・。もっと時間がかかると思ってたのに。

すれ違った。

隣の佐々木の声が聞こえたのか、視線を明らかに逸らされた。

トイレに入る瞬間振り返ると彼女がこっちを見ていた。
視線は合ったはずなのに、ゆっくり気が付かなかったかのように逸らされた。
トイレから帰っていて、彼女の前の席が空いたのに気が付いてても、さすがに行けず。

実りのない飲み会だった。

早紀さんには目礼をしてさっさと引き上げた。
彼女が二次会に行かなかったのは確認したから。