「だって最近食事にも行ったし、二回も。話もしたのに。おまけにそっちは先輩と付き合ってるってのも否定してなかったよな。」
だって・・・・。
いつものようにジッと見つめて見上げてたら怒られた。
「だから、大体は分かるけど、声に出せって。聞きたいんだよ。ちゃんと。」
「だって、妹が欲しいって言ったじゃない。」
「は?」
「妹が欲しかった、甘やかしたいって言いながら私を見たじゃない。普通は意識しないけど二個も年上だし、なんだかんだと世話を焼いてくるし。報告しろ報告しろって、兄貴ぶって。」
「は?」
明らかに「は?」な顔をしてる。
自分でも今言っておかしいと思い始めた・・・・気もする。
「譲、妹が欲しいからって・・・・、じゃあ可愛い彼女作った方が手っ取り早いなあって思うじゃん。甘やかすんなら彼女でもいいし。」
知らないわよ。そう思ったんだから。
いろいろ積み重なってそう思ったんだから。
「疲れた。」
ソファにもたれて言う。
お前が言うな。全然痩せてないじゃないか。
私を見ろ。髪まで切って、こんなにゲッソリとして、みゆきには酷いとかうっとうしいとかまで言われて。
じっと見てたら気が付いてくれた。
「昼の質問に答えてないよ。」
何?
「先輩のことが好きだけどうまくいかなくて悩んでたのか、それとも俺のことで悩んでくれてたのか、どっちって聞いたよね。答えてよ。」
体を起こして顔を寄せてきた。
「どっち?」
ニッコリ笑って聞く。余裕を見せてる。
本当は分かってるくせに。
「ちゃんと言葉で答えて。」
お願いだから・・・・と。
そう言う声は本当に真剣で。
「先輩は関係ない。」
「良かった。」
抱きしめられた。
暖かい、全然想像もしてなかった暖かさに包まれた。
諦めてたのに、今こうしていて、・・・・・・涙が出る。
「譲・・・・。」
目を開けて顔を見る。
「馬鹿、鈍感・・・・どうしようもない。」
酷い。
今の声のトーンは絶対、もっと違う言葉につながると思ったのに。
「だけど、大好きだって。ずっと言ってたのに。社内で彼氏を作るつもりはありませんって。何だよそれ。」
確かにそう宣言していた。
おかしい、どうしてこうなった?
でも最初からこうだったから。
やっぱり、馬鹿で鈍感で、どうしようもない・・・・って言われるほどでもないはず。
「譲。」
また罵られると思って顔はあげない。
「顔上げて。」
「嫌だ。」
「もうぐちゃぐちゃな顔は昼間見たし、いいよ、鼻水くらい出てたって。いまさらだし。」
は?今更って、何よ。そんな変な顔見せてないし。
鼻水も出てない・・・・と思う。
それでもゆっくり息を吸い込んで鼻をすすってみた。
ちょっとしか出てない、これは涙です。
うれしいから、その涙です。