仕事は終わった。
手早く後始末をする。

ガムテープでスカートにまだうっすら残っていたホコリを取る。
綺麗になったみたい。満足してロッカーにしまった。
バッグを持って廊下に出る。

どこで待とうか・・・・。




「譲、まさか、逃げるつもりか?」

耳元で聞こえた低い声に飛び上がりそうなほどビックリした。

ずっとそこにいたの?大人しく待ってたの?

「楽しそうにスカートのホコリ取りをしてたから待ってたんだけど。」

「ありがとう。」

大人しくしてくれてたんだ。
別に楽しくホコリ取りなんてしてないけど。

「帰ろう。」

手を取られそうになったのでさりげなくかわすとムッとされた。
無理。
顔を見上げて目で伝えた。

「分かった。」

伝わったなら良かった。


取りあえず大人しくエレベーターに乗り込む。私の背後に立った大場。
端っこに立ってるからこっそり見えない方の指を絡ませてくる。
くすぐったくて思いっきり握った。
頭の上で笑われた気がした。

それでもエレベーターが到着すると手を離した。

どこに行くの?

駅の近くまで来たのに無言で先を歩く。
ついて行くと改札をくぐり電車を待つ。
慣れたルートのようで。


「どこに行くの?」

「俺んち、この路線なの。知ってる?」

「知りません。」

「多分近いから、意外に近い。」

「近いから何?」

「とりあえずうちで話をして、遅くなってから送って行く。」

「遅くならなければ一人でも帰れるし。」

「無理。」

「何で?」

「はあ?」

そう言うと呆れたように見て、視線をそらした。

大人しくついて行く。
降りるまで駅名は分からなかった。


「次な。」

そう言われた。

「あ、本当に近いかも。」

直線にすれば近い。
車なら近い。バスもありそうなくらい。ない?
電車にすると面倒な乗り換えがある。
車で送ってくれるのかな?
早く帰りたい気持ちも少しはある、少し・・・・かそれより多く。