トイレのドアが開いてみゆきが来てくれた。


「大場君に頼まれたんだけど。大丈夫?」

「うん。」

「ねえ、凄いホコリだらけ。」

指さされた服を見ると真っ白だった。

「何してたの?」

「サボってた。」

「・・・・・。いつ教えてくれるの?」

「明日以降。」

笑顔が出来た、酷い顔に酷い格好だけど。多分いい笑顔。

「分かった。楽しみにしてる。先輩も心配してたけど・・・・なんだか可哀想になってきた。」

「・・・ありがとう。」

「なんとなく分かった気がした。」

目が合う。
分かった?

「まあ楽しみに報告を待つ。奢ってね。」

そう言っていなくなった。

目元を丁寧に直した。
服は力いっぱいホコリを払った。


すごく久しぶりに自分の席に戻った気がする。
こっそりと戻った。
時計を見ると・・・・、あと一時間もない。
確実に30分はサボってたかも。

続きの書類をする。

集中する。

定時には終わらない。
迎えに来るって言ったから、周りは早く帰ってもらいたい。
よく考えたら連絡先を知らないから。
直接来るしかない。

先輩が終わった、みゆきも終わった。
自分の仕事をする振りで横目で確認してる自分。
早く帰って欲しくて。

あと少し、私はあと少し。

ふたりが先に帰った。
勿論手伝おうかと言われたけど、あと少しをアピールした。
笑顔で二人に手を振った。

ふたりが帰ってほっと息が付けた。
後は大丈夫。

早く仕事を終わらせて待とう。
呼ばれたらすぐに行けるようにして、待ちたい。
呼び捨てで登場しそうな予感しかしない。
目立って欲しくないからこっそり合図が欲しいけど、無理かも。
そんなドキドキな不安に怯えつつ。