次の日、隠せなかった腫れた目。
前髪を押さえつけるようにして眼鏡をかけて仕事をする。

お昼にみゆきに外に連れ出された。

仕事はさすがにぼちぼちになっていた。
いっそ山の様になってもらってもいい。
すごく集中するから。
ぼんやりする暇がないくらい集中するのに。

「ねえ、どうしたの?」

「最近元気ない日が多すぎる。」

せっかくお気に入りのレストランに来てるのに食欲もない。
昨日の夜のシチューは今日に繰り越し。
今日こそ食べるから。


「いろいろと考えることがあって。」

「ねえ、千野先輩に誘われたでしょう?」

「映画?行ったよ。教えたよね?」

「聞いたよ、それは。食事断ったんだって、次もあんまり乗り気じゃなかったって言ってた。」

「誰が?」

「千野先輩。」

「いつ、そんな話したの?」

「昨日のランチの時。一緒に食べたの。」

「そう。だってお昼食べたばかりだったし、お腹空いてなかったの。ちょっと暗い映画だったし。映画見てそこでお終いにしただけだよ。」

「また誘いたいって言ったのに、条件が合えばって言われたって。」

「だって映画にも好みがあるじゃない。無理やりそろえなくても。」

「先輩は映画だけじゃなくて、普通のデートみたいな事を言ったじゃないの?」

「違うよ。映画館の中だったし。」

みゆきと見つめ合う。
ため息をつかれた。

勘違いだってば。

なんでみゆきも大場もそんな勘違いするの?
そんな雰囲気ないから。
あんな大場と秘書課の人のような雰囲気、私と先輩にはない。
本当に先輩後輩、そんな感じ。

でも大場が知ってるってことは・・・・他に誰が知ってるの?
もう、勝手に噂になったら・・・・・、先輩を好きな人がいたら大変じゃない。

「じゃあ、今日は何でそんなひどい顔なの?」

「ハッキリ・・・ひどいって。」

「何かあった?」

「ない。ちょっと悲惨な映画見たの。悲しすぎて眠れなかった。」

「なるほど、言いたくないと。」

「何で?」バレた?

「正直に言えば?」

「だから・・・・。」

同じことを繰り返してみたけど。まあ無理。

「じゃあ、言いたくなったら教えて。私にでもいいし、先輩にでもいいんじゃない?」

何で?違うって言うのに。
見つめ合って首を振られた。

「ちゃんと考えた方がいいよ。本当にそう思ってるなら、断った方がいいとも思うし。」

何で関係ない人が入り込んで話をややこしくするんだろう?

「ねえ、その話、他に誰が知ってるの?」

「何?先輩とのデート?」

「映画に行ったり食事に行ったこと。」

言い直した。誰が聞いてるか分からない。

「さあ?先輩が誰かに言ってたら・・・。誰かに何か言われたの?」

「いいの。誤解だから。」

みゆきの皿は空になる。
私の皿はまだまだ。
もういい、フォークを置く。

ランチを終えて席に戻った。

「勝手に痩せようなんて抜け駆けは許さないからね。」

席に戻って座ると、横からチョコレートが出てきた。

「ありがとう。あとで食べる。」

机の引き出しにしまう。

そのまま忘れてた。ごめん、みゆき。