約束の土曜日。晴れ時々曇り。
いつもよりちょっと緊張して出かける服を選んだ。
アクセサリーをつけて、荷物も普段とは違うものに入れかえて。
待ち合わせの時間には十分間に合うように部屋を出た。
電車の中でもドキドキして、待ち合わせの場所に20分も早く着いて、携帯を見ながら時間をつぶしながらもワクワクして。
昨日、みゆきに報告しようと思ったのにしてない。
この間みゆきがいなくなった後、先輩と2人で食事をしたことは教えた。
今日も先輩と映画に行って食事もするなんて。
来週教えよう。
さほど待つことなく声をかけられた。
「只野さん、お待たせ。早いね。」
笑顔の先輩がいた。
スーツ姿じゃなくて楽なシャツの重ね着にパーカーを手にしている。
それでもシンプルなデザインのシャツを上手に重ねて、小物と色を合わせている。おしゃれさんだった?
部屋がきれいだと言っていたし、納得する感じ。先輩らしい。
「なんだか不安なんだけど、どこか変かな?」
またジッと見てたみたい。
「あ、いえ、全然です。おしゃれです。」
ついまた首元を見てしまった。
「只野さんもいつものイメージとは違うね。似合うね。その色。」
私は普段地味な事務服だし、自分も地味なので私服は薄いけど明るい色を好む。
それでも仕事用はまだ大人しめで。
今日は明るいイエロー系のワンピースを着ている。
結構気に入ってる一枚だった。
一緒に駅中を見る。
食事を食べてから映画の予定だった。
「何食べる?」
「先輩、今日は私が払います。何でも先輩の食べたいものをどうぞ。」
「僕が誘ったのに?」
「もちろんです。もう二回もごちそうになってるんですから。」
先輩が選んだのは焼き立てのパンがおかわり出来るビストロ。
ドレープのかかった幕のようなカーテンで仕切られた店内は薄暗い。
お昼前だと言うのにテーブルの赤い蝋燭だけの演出。
なんともロマンティックなお店を選んだ。
先輩、こういった感じが好きなんだ。
キョロキョロと店内を見回してしまう。
メニューを見ながらオーダーして待つ。
さすがにお酒は止めた。
楽しみにしていた映画、寝たら大変。
それでなくても、疲れてたはずなのに昨夜はなかなか眠れなかっった。
緊張のせいだと思う。
朝抜きのせいで最初の三分の一くらいを一気に食べたかも。
「は~、お腹空いてたんです。」一息つく。
「うん、見てて分かった。」
「・・・・すみません、無言でした。」
「毎月のことだけど、山を越えたこの週末が一番楽しいよね。」
「はい、解放感です。」
「あの付箋に書いた事、結構するの?」
「はい、だって大したこと書いてないです。今日の映画は前に公開された時に見れなくて残念に思ってたんです。」
「そうなんだ。原作が好きだったとか?」
「いいえ、内容です。映画の内容がすごく気になって。」
「他はどんな感じの映画見る?」
「心理劇メインだけど、怖くない奴です。だまされた感じのラストが好きです。」
「千野先輩は?どんなのが好きですか?」
「残酷物と動物物と戦争物は見ない。実話も苦手。あくまでもスカッとする作品が好き。間抜けなものとスリリングなもの両方あったらいい。」
「恋愛ものは見ませんか?」
「さすがに見ない。1人じゃ見れない。」
「彼女と一緒だったら見ます?」
「見る・・・かな。でも同じセリフとか、同じ攻め方とかしたのがバレたらすごく恥ずかしいよね。」
「先輩、そんな映画のようなセリフを言うんですか?意外です。」
「えっ?・・・・・言わないか・・・・。」
「いえいえ、ご自由にどうぞ。自分の人生では自分が主人公ですよ。」
「只野さん、顔が笑ってる。」
「だって、なんだか想像できなくて・・・う~ん、出来るかな?微妙です。」
食事を終えて映画館に移動する。
さすがにポップコーンも匂いだけで満足。
映画の性質もあってか、一人の人も多いし、圧倒的に落ち着いたカップルが多かった。娯楽という感じじゃないから。
映画は本当にじんわりと来て、ちょっとしんみりともした。
ただ、やっぱり一人で見た方が良かったみたい。
全然泣けなかった。
すごく心が苦しいくらいなのに、隣に知ってる人がいると思うと泣けなかった。
私の楽しみ方としては本当に感情を出したい方なので、それはすごく残念だった。
どこかスッキリしない感じが残った。
「大丈夫、なんだか・・・どんよりとしてるけど。」
「すみません、いつもそうなんです。入り込んで考えて考えて、自分で落としどころを見つけて納得するんです。こんな救いようのない作品は特に。」
「ちょっと甘いものでも食べて元気出す?」
先輩が明るく誘って来るけど。
「いえ、今日はこれで満足です。あとしばらくは部屋で余韻に浸って心を落ち着けます。」
「そう。残念だけど、しょうがないね。」
ガッカリした感じに言う先輩。
だってまだ早い時間だから。
先輩は映画の感想をシェアするタイプかもしれない。
私はちょっと違うかな。
1人で考えたいタイプです。
「只野さん、じゃあ、また誘っていいのかな?」
「・・・はい。えっと好みがあって都合が合えば、また。」
この間と同じ返事だけど。
泣きたい映画は1人で見ようとちょっと思ってるから。
笑える映画ならなんとか・・・・。
ちょっと間が開いた。
「そうか、うん、わかった。じゃあ、また来週。」
「はい、先輩。また来週。お疲れさまでした。」
つい仕事の時の様にお疲れ様まで言ってしまった。
ちょっと変だったかな?
改札を入り電車に乗る。
それでも途中で降りて別な路線に乗りかえて。
少し一人になってぼんやりしたかった。
いつもよりちょっと緊張して出かける服を選んだ。
アクセサリーをつけて、荷物も普段とは違うものに入れかえて。
待ち合わせの時間には十分間に合うように部屋を出た。
電車の中でもドキドキして、待ち合わせの場所に20分も早く着いて、携帯を見ながら時間をつぶしながらもワクワクして。
昨日、みゆきに報告しようと思ったのにしてない。
この間みゆきがいなくなった後、先輩と2人で食事をしたことは教えた。
今日も先輩と映画に行って食事もするなんて。
来週教えよう。
さほど待つことなく声をかけられた。
「只野さん、お待たせ。早いね。」
笑顔の先輩がいた。
スーツ姿じゃなくて楽なシャツの重ね着にパーカーを手にしている。
それでもシンプルなデザインのシャツを上手に重ねて、小物と色を合わせている。おしゃれさんだった?
部屋がきれいだと言っていたし、納得する感じ。先輩らしい。
「なんだか不安なんだけど、どこか変かな?」
またジッと見てたみたい。
「あ、いえ、全然です。おしゃれです。」
ついまた首元を見てしまった。
「只野さんもいつものイメージとは違うね。似合うね。その色。」
私は普段地味な事務服だし、自分も地味なので私服は薄いけど明るい色を好む。
それでも仕事用はまだ大人しめで。
今日は明るいイエロー系のワンピースを着ている。
結構気に入ってる一枚だった。
一緒に駅中を見る。
食事を食べてから映画の予定だった。
「何食べる?」
「先輩、今日は私が払います。何でも先輩の食べたいものをどうぞ。」
「僕が誘ったのに?」
「もちろんです。もう二回もごちそうになってるんですから。」
先輩が選んだのは焼き立てのパンがおかわり出来るビストロ。
ドレープのかかった幕のようなカーテンで仕切られた店内は薄暗い。
お昼前だと言うのにテーブルの赤い蝋燭だけの演出。
なんともロマンティックなお店を選んだ。
先輩、こういった感じが好きなんだ。
キョロキョロと店内を見回してしまう。
メニューを見ながらオーダーして待つ。
さすがにお酒は止めた。
楽しみにしていた映画、寝たら大変。
それでなくても、疲れてたはずなのに昨夜はなかなか眠れなかっった。
緊張のせいだと思う。
朝抜きのせいで最初の三分の一くらいを一気に食べたかも。
「は~、お腹空いてたんです。」一息つく。
「うん、見てて分かった。」
「・・・・すみません、無言でした。」
「毎月のことだけど、山を越えたこの週末が一番楽しいよね。」
「はい、解放感です。」
「あの付箋に書いた事、結構するの?」
「はい、だって大したこと書いてないです。今日の映画は前に公開された時に見れなくて残念に思ってたんです。」
「そうなんだ。原作が好きだったとか?」
「いいえ、内容です。映画の内容がすごく気になって。」
「他はどんな感じの映画見る?」
「心理劇メインだけど、怖くない奴です。だまされた感じのラストが好きです。」
「千野先輩は?どんなのが好きですか?」
「残酷物と動物物と戦争物は見ない。実話も苦手。あくまでもスカッとする作品が好き。間抜けなものとスリリングなもの両方あったらいい。」
「恋愛ものは見ませんか?」
「さすがに見ない。1人じゃ見れない。」
「彼女と一緒だったら見ます?」
「見る・・・かな。でも同じセリフとか、同じ攻め方とかしたのがバレたらすごく恥ずかしいよね。」
「先輩、そんな映画のようなセリフを言うんですか?意外です。」
「えっ?・・・・・言わないか・・・・。」
「いえいえ、ご自由にどうぞ。自分の人生では自分が主人公ですよ。」
「只野さん、顔が笑ってる。」
「だって、なんだか想像できなくて・・・う~ん、出来るかな?微妙です。」
食事を終えて映画館に移動する。
さすがにポップコーンも匂いだけで満足。
映画の性質もあってか、一人の人も多いし、圧倒的に落ち着いたカップルが多かった。娯楽という感じじゃないから。
映画は本当にじんわりと来て、ちょっとしんみりともした。
ただ、やっぱり一人で見た方が良かったみたい。
全然泣けなかった。
すごく心が苦しいくらいなのに、隣に知ってる人がいると思うと泣けなかった。
私の楽しみ方としては本当に感情を出したい方なので、それはすごく残念だった。
どこかスッキリしない感じが残った。
「大丈夫、なんだか・・・どんよりとしてるけど。」
「すみません、いつもそうなんです。入り込んで考えて考えて、自分で落としどころを見つけて納得するんです。こんな救いようのない作品は特に。」
「ちょっと甘いものでも食べて元気出す?」
先輩が明るく誘って来るけど。
「いえ、今日はこれで満足です。あとしばらくは部屋で余韻に浸って心を落ち着けます。」
「そう。残念だけど、しょうがないね。」
ガッカリした感じに言う先輩。
だってまだ早い時間だから。
先輩は映画の感想をシェアするタイプかもしれない。
私はちょっと違うかな。
1人で考えたいタイプです。
「只野さん、じゃあ、また誘っていいのかな?」
「・・・はい。えっと好みがあって都合が合えば、また。」
この間と同じ返事だけど。
泣きたい映画は1人で見ようとちょっと思ってるから。
笑える映画ならなんとか・・・・。
ちょっと間が開いた。
「そうか、うん、わかった。じゃあ、また来週。」
「はい、先輩。また来週。お疲れさまでした。」
つい仕事の時の様にお疲れ様まで言ってしまった。
ちょっと変だったかな?
改札を入り電車に乗る。
それでも途中で降りて別な路線に乗りかえて。
少し一人になってぼんやりしたかった。