「一緒に帰るとか手をつなぐとか、しないの?」

「手をつないだことならあるって程度。向こうからコクってきて、委員会つながりで。嫌いじゃないし、おれのことをすごい好いてくれてて、正直かわいいなとは思うんだけど、
何ていうか……何か違う。思ってたのと、違う」

「違うって? 相手の子に対して失礼なこと言ってるって、わかってる?」

「わかってる。でも、どうしようもないんだよ。だって、やっぱ違うんだ」

「何が違うっていうの?」

「好きで付き合ってたら、普通、もっと何かしたいって思うようになるもんだろ? キスしたり抱きしめたり、したくなるはずで。
でも、それがないんだ。彼女相手だと、そういうのしたいって思えない」


わたしは横目で雅樹を見た。

雅樹は眉間にしわを寄せて、抱えた膝の頭を見つめている。


「好きになってないの、彼女のこと?」

「その好きっていう感覚がわかんないんだって。そりゃ、おれだって男だし、その……性欲っていうか、そういうのはあるけど。違うじゃん。恋と単なる性欲って、違う」

「やめてよ、そんな話」

「さわってみたいってのはあるんだよ。女の体とか、どうしても見ちゃうような衝動って、男だったらやっぱあるから。でも、彼女を前にすると、違う気持ちが働く。潔癖症、みたいなやつ」

「潔癖症?」