オープンキャンパスの開会式は長くて、体育館いっぱいの人混みのせいで暑くて息苦しかった。
立ったままで、高校の校長先生の話を聞いているうちに、だんだんめまいがしてきた。
「蒼?」
肩を揺さぶられてハッとしたとき、わたしはしゃがみ込んでいた。
立っていたはずなのに。
わたしを呼んだのは雅樹だ。
ひとみと雅樹が床に膝を突いて、わたしの顔をのぞき込んでいた。
「蒼ちゃん、貧血? 琴野中の先生、呼んでくる?」
「蒼、昨夜は眠れなかったんだろ? 無理すんなよ」
大丈夫、とだけ答えた。
タイミングよく、会場じゅうの人が座って話を聞く流れになったから、わたしは目立たずにすんだ。
寒気がする。
鼓動が変なふうに高鳴っていた。
ひとみと雅樹に、知られたくないことを知られてしまう。
わたしがおかしいってことに気付かれてしまう。
それがイヤで、怖くて、暑いのに鳥肌が立った。
壇上で誰かが話す言葉には、まったく集中できなかった。
オープンキャンパスのメインイベントは、体験授業だ。
適当な人数ごとに、希望する科目を受けられる。
ひとみと雅樹のリクエストで、わたしたちは特進科の数学を受けた。
内容もスピードも高校の授業そのままだという事前説明どおり、めちゃくちゃ難しかったし速かった。
わたしは基本的に文系だ。
数学も理科も授業の内容を完璧にしているから定期テストでは点が取れるけれど、実力テストは点数が落ちる。
計算も遅い。



