「前の学校の同級生」

「もしかして、噂になってる蒼ちゃんの彼氏?」

「は?」

「だって、蒼ちゃん、恋バナとか全然、反応しないでしょ? きっと前の学校に彼氏がいて遠距離してるんだって、みんな噂してる」

「違う。そんなんじゃない」

「じゃあ、あのカッコいい人、もう一人の子の彼氏?」


どうしてそう短絡的に誰かと誰かをくっつけようっていう発想になるんだろう?

男女だったらくっつけたがるし、同性だったら対立構造の噂を立てたがる。

噂がきっかけで人間関係がおかしくなった人を、保健室で何人も見てきた。


「ひとみも違う。今、木場山で誰がどうなってるとか、わたしにはわからないから」

「そーだよね。蒼ちゃん、もう琴野の子だもんねー」


ウチらの仲間と言わんばかりの笑顔と口調に、胸の中でイラッとした。

琴野の子。

自分では絶対に認めたくないことだ。

わたしは、どこにも所属したくない。

一人でいたい。


ひとみは相変わらず無邪気だった。


「あたしたちが蒼ちゃんのこと取っちゃって、琴野中の人たちに悪いね」

「気にしなくていいと思う」

「蒼ちゃんは、相変わらずクールだー」

「そう?」

「あたしは、一人じゃ全然ダメだもん。県立の中でも日山高校にしたいのは、蒼ちゃんがここに来るってわかってるからだし。
大学も、たぶん県外に出ることになるでしょ? でも、蒼ちゃんと一緒だったら安心だなって思ってて」


大学、か。

考えたこともなかった。

そんな年齢まで自分が生きられるなんて、信じられなくて。