ひとみと雅樹は、オープンキャンパスの前日に来た。
二泊三日で、最終日にちょっとだけ観光をして帰る、という予定。
駅で会った瞬間、変わったなと思った。
ひとみはふっくらして大人びて、雅樹はだいぶ背が伸びた。
「蒼ちゃんは変わってなーい!」
ひとみはテンションが高かった。
電車で少し乗り物酔いしたという雅樹は、逆にけだるげだった。
雅樹は、唇の片方だけ持ち上げる笑い方をして、声変わりを終えた低い声で言った。
「蒼が縮んだように見える。おれが伸びただけなんだけど」
わたしは、何か言い返そうとした。
とっさに声が出なかった。
しゃべれない。
学校で一言も声を発しない日がある。
そんなふうだから、わたしは会話の仕方がわからなくなっている。
変な表情をしてしまったのかもしれない。
ひとみと雅樹がわたしの顔をのぞき込んだ。
わたしは視線をそらした。
高校では、ひとみや雅樹と同じところに通うことになる。
きっと、中学時代のわたしの様子を、二人とも知ることになるだろう。
カッコ悪いって思われるだろうな。
いや、それ以前に、オープンキャンパスだ。
日常生活では授業以外は全部、ホームルームも集会も避けてきたわたしが、オープンキャンパスなんていうイベントに耐えられるだろうか。
いちいちこんな心配をしなければならないなんて、本当に、わたしは普通ではない。
おかしい。
壊れている。



