邪魔が入る日もあった。
例えば、菅野だ。
菅野は課題ノートの回収係だった。
英語や数学は毎日のように提出の必要があって、回収係は仕事が多い。
そんな厄介な係を率先して引き受けたのは、そうでもしないと課題をやらないかららしい。
黙って回収すればいいのに、菅野はちょくちょくわたしに話しかけてきた。
「蒼さんって、いつも勉強してるよな。ノート、まとめ直してるの? それやったら、やっぱ頭に入る?」
「何もしないよりは」
「塾に行ってないのに成績トップクラスって、自分で努力してるからだよなー。すげぇなって、いつも思ってんだ」
笑顔の気配があって、わたしはそっちを向けない。
菅野は小柄で童顔で、容姿のとおりに妙に無邪気で子どもっぽいみたいだ。
しょっちゅう、からかわれたりバカにされたりしている。
「おい、菅野ー。いくら蒼ちゃんのこと好きだからって、勉強の邪魔すんなってー」
「え、ちょっ、そ、そういんじゃ……」
「図星! 真っ赤になったー!」
勉強の邪魔なのは、菅野本人よりも、そうやって火をつけて回るやかましいグループだ。
スカートの短い女子と、腰パンに茶髪の男子。
小柄な菅野がムキになるのを見下ろして、いじめスレスレの汚い言葉で、いじり倒している。



