眠ることと食べること。
人が生きるうえで当たり前のことが、上手にできない。
学校という場所にいるのが苦痛だというのも、普通ではない。
わたしはおかしい。
壊れている。
いっそこのままバラバラになってしまえばいいのに。
休み時間も昼休みも一人だった。
壁を作る方法を、わたしは自然と身に付けていた。
勉強していたらいいんだ。
そうしたら、誰も声をかけてこない。
わたしが授業中に取るノートは、ぐちゃぐちゃなくらいに書き込んである。
先生が授業中に発言する言葉は、拾えるだけ全部メモした。
ぐちゃぐちゃのノートを、休み時間や昼休みに清書する。
キレイに書いたほうのノートは、智絵の家に届ける。
初めて智絵の家にノートを届けたときは不安だった。
余計なお節介だと、自分でも思っていた。
「いらない」と拒まれたら、どうしよう?
でも、拒まれなかった。
智絵は部屋に引きこもったまま出てこなかったけれど、
智絵によく似た、まつげが長くてやせた体つきのおかあさんが、ノートを受け取ってくれた。
わたしの書いた小説と手紙も一緒に。
拒まれないなら、頑張れる。
一年間、耐えてみせる。
新しいクラスでもいじめがあるのかもしれない。
グループとか派閥とか、面倒くさいものもあるのかもしれない。
わたしは目も耳もふさいだ。
誰とも関わりたくなかった。
孤独になりたかった。
空気のようになりたかった。



