話を聞いているうちに、胃が痛んだ。
めまいがした。
視界の焦点が合わなくなった。
息が苦しくなった。
作り笑いをした頬はこわばりっぱなしだった。
でも、笑いながら「あの子らはバカ」と言ってのけるこのグループは、本人たちがいるところでは、絶対に悪口を表に出さない。
二つのグループ同士は仲がいいのだと、わたしは今まで思っていた。
実際はそうではないらしい。
延々と続きそうなおしゃべりを、わたしは「ごめん」と言って断ち切った。
「ごめん、図書館に行くから。勉強しないと」
勉強っていうのは、学校という世界では最強クラスの装備品だ。
勉強ができるだけで、身を守ることができる。
多少の無理も通せる。
どのグループからも、先生方からも、一目置かれる。
わたしはたびたび教室を抜け出す。
起きられなくて欠席することも、だんだん増えた。
担任が臨時の家庭訪問に来た。
わたしは部屋に閉じこもっていた。
母が申し訳なそうに対応していた。
家庭訪問くらいでは、わたしの行動は変わらない。
「自分で勉強する」がわたしの免罪符だった。
いい点数さえ取れば、先生方は結局、わたしの行動を黙認した。
両親の口数が減った。
わたしの体調が悪い朝、母はあきらめ切ったため息をついて、学校に欠席の電話を入れる。
わたしも、学校に行こうが行くまいが、口を開かない日が多くなった。
学校に行く日の朝はどうにか食事を取るけれど、行かない日は寝ている。
昼間は適当なものを食べていた。
でも、夜になると、いつ何を食べたか思い出せなかった。