「全然知らない。それなのにいきなりあれって、テレビか漫画の影響か? ああいうわけわからないのに付き合えるほど、おれは暇じゃねえよ。勉強あるしさ。蒼、志望校、決めたんだって?」
「響告大学。担任の鹿島先生から勧められたし、同じところを狙ってるやつがいて、二人とも合格できたらなって話になった」
竜也のことを思い出しながら、わたしは言った。
つい二日前に竜也から手紙が届いたところだった。
雅樹はおもしろがるような表情で小首をかしげた。
「同じところを狙ってるって、誰のことだろうね? おれも響告大学志望なんだけど」
「知ってる」
「ついでに言えば、ひとみの第二志望も響告大だろ」
「あの子は、第一志望に受かってくれたらいい」
「別々の大学になっていいわけ? 最近、ひとみとずいぶん仲がいいみたいだけど」
雅樹の「仲がいい」は含みのある言い方だった。
ひとみが望んだとおり、周囲にもちゃんと、普通でない恋のように見えてしまっているんだ。
「ひとみのこと、今、すごく重い。もう、いろいろ意味がわからないよ。全部リセットしたい。文系では響告大を狙ってるのはわたしだけだから、ここで受かって、わたしのことを誰も知らない世界に行ってしまいたい。ひとみはいなくていい」
するすると口から出てしまう言葉に、わたしは自分で驚いた。
どうしてこんなに無防備に白状しているんだろう?
雅樹が相手だから、気楽?



