異能や邪眼の設定は癖があってカッコいいと思っているのは本人だけで、結局のところ、多くの人が似たり寄ったりのことを考えている。

それが滑稽で、わたしはできるだけ違うものを書こうと決めていた。

それが今回、本当の意味で成功した。


自分とはまったく違う、明るく恋する女の子を書いている間、わたしは本当に自分自身から離れていた。

普段は聴かないような恋の歌を聴きたくなった。

ハッと気付くと、笑いながら書いていた。


何者にでもなれるんだ、と実感した。

本を読むとき、自分とは違うタイプの登場人物にも感情移入することがある。

小説を本気で書くときは、読むときの比ではないほどに深く、わたしは主人公の中に入り込む。


原稿を仕上げて提出して、上田の描く挿絵を下絵の段階から三回ほど確認して、印刷が上がったら製本をする。

部誌の制作過程にフルに関わったのは初めてだった。

わたしはその間、一度も学校を休まなかった。

一ヶ月皆勤なんて、何年ぶりだろう?