空港に着いて、一つひとつが時間のかかる手続きを何度も経ながら、やがて飛行機に乗り込んだ。
来たときの便と同じで、クーラーがよく効いていた。
わたしは薄手のパーカーをリュックサックから出して羽織った。
これはミネソタで買ったものだ。
ケリーが選んでくれた。
白地で、さりげない位置にい花が描かれている。
フードに通してある紐の末端に、青い大きなビーズが留められている。
日本に着いたら、ケリーとブレットに手紙を書こう。
いつかまたミネソタを訪れよう。
いつかって、いつになるんだろう?
わたしはそれまで生きていられるだろうか。
生きて、もう一度ケリーとブレットに会いたい。
もっと上手にケリーをダイアモンドと呼んで、二人で話をしたい。
そのときは、今よりも英語の話せる自分になっていたい。
ああしたい、こうしたい。
ミネソタにいる間、やりたいことがたくさん見えた。
壊れてしまったと思っていたわたしの胸の奥には、まだ希望が残っていた。
熱をともす力があった。
感情は死なずにいてくれて、動いてほしいときにちゃんと機能した。
だって、わたしが生きていい世界は、学校という小さな鳥かごだけじゃないんだ。
わたしはそこから飛び立っていい。
遠くへ行って冒険したっていいんだ。
ミネソタで過ごしたのは、夏の三週間だった。
ケリーにもらったサファイアという名前の、その青い輝きのようにキラキラとした三週間だった。
ねえ、ケリー。
わたしのダイヤモンド。
いつかまた必ず会おう。
そのときわたしは、この夏には話せなかったことをたくさん話すよ。



