楽しい時間はあっという間に過ぎるって、それは本当だ。
学校では、日本人とホストファミリーが別々に過ごす時間が設けられるようになった。
フェアウェルパーティー、つまりお別れ会ではそれぞれが相手のために出し物する。
その準備の時間だ。
総勢十五人の日本人は何組かのグループに分かれて、自分たちの得意なことをやるという流れになった。
一人で空手の型を披露する子もいる。
四人でチームを作って、日本から持ってきたCDに合わせてダンスをする子たちもいる。
桃太郎の紙芝居をするのだと言って、イラストとシナリオを書き始めたグループもある。
CDプレーヤーやピアノやギターは自由に使っていいと言われた。
わたしはちょっと考えた。
人前での出し物って、どうしようか。
わたしにできることはある。
今なら、歌とギターを思い出せるんじゃないか。
竜也がわたしに訊いた。
「蒼さんは何をするんですか?」
「思い出せたらね、ギターを弾こうかなって。弾き語り、前はできてたから」
「えっ、すごい。聴いてみたいです」
わたしはギターを構えてみた。
ピアノの練習をしている子に音をもらって、六本の弦のチューニングをする。



