ひとみは「思い出した!」と言うように、ポンと手を打った。


「そうそう、学年が変わって、まずクラス替えがあったんだよね。二クラスだから、半分しか入れ替わらないけど。
それで、『蒼ちゃんって隣のクラスだっけ?』って、どっちのクラスでも言っちゃう感じだった。最近やっと言わなくなったの」


その瞬間、感じた。

わたしの居場所はここにはないんだ、と。


やっぱり、ここはわたしの帰る場所ではないんだ。

わかっていた。

木場山中に入学したときから、みんなと一緒にここを卒業することはないんだと知っていた。

それを今、改めて確認した。


まあ、「おかえり」じゃなくて「遊びに来てくれてありがとう」だもんね。


ひとみはずいぶん急いで部室を抜けてきたらしい。

ようやく合唱部の面々が追い付いてきて、わたしに声を掛けた。

ほかの部でも次々と下校が始まって、わたしは以前のクラスメイトたちに囲まれた。


木場山は小さな中学校だから、部活は強制参加だ。

文科系は合唱部と吹奏楽部しかない。

運動部も人数的に制約が大きくて、サッカー部や男子バスケ部は存在しない。

男子だけの野球部と女子バスケ部、男女いるのがバレー部と卓球部と剣道部と陸上部。