死にたがりティーンエイジを忘れない



胃は少しも痛くなかった。

ひどいはずの肩こりも感じなかった。

毎日が楽しかった。

充実していた。


わたしは、日本で通っている学校でははぐれ者だということを、誰にも悟られずにすんだ。

それくらい自然に、わたしは笑ってしゃべって学校に通っていた。

このひと夏だけの特別な学校に。


家の裏手には、近所の数軒の豪邸で共有する芝生の公園があった。

大きな木々がほどよい木陰を芝生の上に落としていた。

ふさふさの尻尾を持つリスがたくさんいた。


学校から帰ると、ケリーやブレットの体操や水泳の教室がない日は、はだしになって芝生の公園で遊んだ。

まわりには白人の子どもしか住んでいなかったから、みんな、わたしや竜也に興味津々で、日本に関連する本を手に集まってきた。


日本のアニメがアメリカでも受け入れられていることを、わたしは知った。

ただ、キャラクターの名前が日本のままとは限らないから、話が通じるまでにはちょっと時間がかかる。

そうやって苦労すること自体が妙に楽しかった。

まるで暗号の謎解きをするみたいだった。


忍者と刀と空手も大人気だった。

特に空手は、どんな小さな町にも教室があるくらいアメリカ人の間で有名らしい。