死にたがりティーンエイジを忘れない



わたしがサファイアと呼ばれるようになったことについて、竜也が冗談っぽく大げさな膨れっ面で、いじけてみせた。


「蒼さんだけニックネームがあって、ずるいです」


それで、竜也にもニックネームを付けようという話になった。

「竜」の字がドラゴンという意味だとわたしが言ったら、じゃあドラゴンに関係する名前にしよう、と。


ブレットはアニメの『ドラゴンボール』が大好きだから、登場人物の名前を付けたがった。

竜也もその話に乗っかって、わたしもケリーも『ドラゴンボール』ならだいたいわかるし、ああでもないこうでもないと話が盛り上がった。


話といっても、英文としてパーフェクトな文章なんてなかったと思う。

単語がポンポンと飛び交うだけ。


間違いを恐れて頭の中で英作文をしていては、会話に乗り遅れた。

思い付いた単語を、とにかく口に出す。

そうして、聞いてもらう体勢を引き寄せる。

黙り込んじゃダメだ。

単語を口にする。

そうしたら、ケリーもブレットも、わたしと竜也の下手くそな英語を補ってくれる。


竜也のニックネームは結局、決まらなかった。

でも、四人でワイワイと『ドラゴンボール』のキャラクターのことを好きだとか嫌いだとかカッコいいだとか言い合って盛り上がって、わたしは気が付いたら笑っていた。


シャワーを浴びて、就寝。

時間が飛ぶように過ぎるなんて、いつ以来だろう?

普段だったら、時間というものは、ねっとりと絡み付きながら重苦しく這っていくばかりなのに。