死にたがりティーンエイジを忘れない



ケリーが張り切ってお手本を見せてくれた。

その後、ブレットが。

おかげで何となく、取り分けるべき料理の量がわかる。

量も、食べる速さも、どのくらいおしゃべりを挟んでいいのかも、一家の様子を注意深く観察して、わたしは真似をする。


マーガレットが少し心配した。


「日本では食事のとき、チョップスティックスを使うのでしょう。口にはナイフとフォークしかないの。食べにくいかしら?」


箸は、英語ではチョップスティックスっていうんだったっけ。

そんなこと思いながら、首を縦に振るべきか横に振るべきか悩む。

マーガレットの言葉は否定疑問文だった。

日本語の感覚でこれに答えると、イエスとノーが逆になってしまう。


わたしは首を縦にも横にも振らず、たどたどしく説明した。


「日本人も、ステーキやヨーロッパの料理を食べるとき、ナイフとフォークを使います。パスタのときは必ずフォークを使います。だから、わたしたち、大丈夫です」


大丈夫というのは、all right《オール・ライト》。

ホームステイの間、何度もその言葉のやり取りがあった。

大丈夫かと聞かれて、大丈夫と返す。

All right。

わたしは大丈夫。


All rightは、日本語の大丈夫よりも前向きで明るいニュアンスのような気がした。

わたしの個人的な感覚だろうか。