死にたがりティーンエイジを忘れない



十二歳のケリーの説明はあまりうまいとはいえなかったし、わたしの聞き取りの能力も高くない。

蒼という名前が難しい理由を理解するのには、ちょっと時間がかかった。

一言でまとめると、英語を話す人にとって母音が連続する単語はとても発音しづらいということだ。


「あなたの名前はここにいる間、サファイアよ。ア・オ・イ、はブルーという意味だと聞いたの。そうなんでしょ?」

「うん」

「青くて美しいものの中で何がいいかなって考えた。空.海、鳥、すみれ、リボン。でも、やっぱりサファイアよ。そして、あなたにこうして会って、サファイアで正解だったと思った」

「ありがとう」


くすぐったくて、恥ずかしくて、嬉しくて。

胸の奥がギューッと締め付けられるように感じると、速まった鼓動が喉のあたりにせり上がってくるみたいで、頬や耳が熱くなった。


ケリーはキョロキョロして、わたしの部屋に誰も入ってこないことを確かめた。

それから声をひそめて言った。


「サファイア、あなたとあたしだけの約束にしてほしいんだけど、二人でいるときは、あたしのことをダイアモンドって呼んで。あたしはダイアよ」


人の名前を呼ぶというのは、とてもくすぐったいことだ。

でも、英語での会話なら、名前を呼び合うのは普通のことだ。

思い切って、わたしは言う。


「OK、ダイア。わたしもそう呼ぶ」

「二人だけの秘密よ。ブレットにも言っちゃダメだからね」

「わかった」