三教科の中では、英語がいちばん得意だ。
数学は必ず計算ミスを出してしまう。
国語は問題文との相性に左右される。
でも英語は、物心つく前からディズニーソングのCDを聴いて覚えていたおかげで、ペーパーテストもスピーキングもヒヤリングもできる。
それなのに、だ。
単語の意味を答えるだとか、下線部の英文を日本語にするだとか、肝心のところに、わたしの習っていない単語が現れた。
中一のころは、テストで空欄のまま提出したことなんてなかったのに。
新しい学校のことを考えると胃がキリキリするのは、あの英語のテストも関係があるかもしれない。
だって、『The Little Prince』は直訳すれば「小さな王子」だけれど、『小公子』ではなく『星の王子様』なんだって。
知らなきゃ答えられない。
いちばん正答率の高かった単語テストで、わたしだけが間違った。
ひとみは小首をかしげて、ぷっくりした唇を突き出した。
「蒼ちゃんだったら、中間テストで巻き返せると思うよ」
「そうであることを願うけど」
「制服、かわいい?」
「全然。古くさい感じのセーラー服」
「セーラー服、いいじゃん! 木場山は古くさいブレザーだもん」
「ブレザーのほうがマシだよ」
卒業まで着ないとわかっていた木場山中のブレザーは、卒業生からおさがりをもらった。
琴野中のセーラー服は新品を買った。
新入生と同じ、のりのきいた新品の制服を着て、新入生に交じって部活見学をした。
その居心地の悪さといったら、ひどかった。



