「よろしくお願いします」


改めて竜也はそう言った。

わたしも「よろしく」と返した。

そうしたら、双子も元気よく、日本語で「よろしく」と声をそろえた。

ケリーという名前の女の子の方が、続けて英語でまくし立てる。


「あたしたち、日本語を少し勉強してるの。だって、日本のアニメってクールなんだもの。セーラームーンはセクシーでかわいいわよね。
あたしね、日本語で日本のアニメを観たいのよ。だから、二人とも、あたしに日本語を教えてね」
 早口だった。どうに

聞き取れた内容は、たぶんそんなふうだった。

男の子のブレットと目が合う。

そばかすだらけの彼はチラっと笑うと、さりげなくそっぽを向いた。

照れているらしかった。


わたしたちはマーガレットの大きな車に乗って、素朴で美しい街並みの中を抜けた。

左ハンドル、右車線。

車はやがて、芝生と街路樹の緑が鮮やかな住宅地の一角、これからステイする家に到着した。


短いドライブの間じゅう、わたしの目に映る景色は、何もかもが非現実的なほどに美しかった。

自分とは違う誰かの人生を演じるかのようにキラキラと楽しい毎日が、そうやって始まった。