空港からバスに乗って、わたしたちがステイするセントポールの郊外へと移動する。
アメリカでも夏休みの時期だ。
この期間を利用して、ある高校の課外学習のような形で、日本から訪れたわたしたちとの交流学校がおよそ一ヶ月間開かれる。
バスの到着地こそが、交流学校を主催する高校だった。
その高校の先生の一人が、かつて日本に留学していたらしい。
そのときイチロー先生と仲良くなったんだそうだ。
彼が帰国した後、今度はイチロー先生がアメリカに留学して、そのときもよく会っていたらしい。
芝生のグラウンドにホストファミリーたちが集まっていた。
十五人の日本人は順番に名前を呼ばれて、ホストファミリーと引き合わされる。
わたしが呼ばれたのは最後だった。
竜也も同時に呼ばれた。
ホストファミリーたちのリーダーを務めるマーガレットが、十二歳の双子のケリーとブレットの肩を抱いてやって来て、わたしと竜也に告げた。
「こんにちは、アオイ、タツヤ。ホストマザーのマーガレットよ。アオイ、日本からお手紙をありがとう。この子たちも喜んで読んだわ。あなたはきれいな英語を書くのね」
「ありがとうございます」
わたしはそれしか言えなかった。
こういうときに謙遜してはいけないということは、日本を旅立つ前に一郎先生から説明を受けた。
謙遜するほどの語学力もないから、「サンキュー」しか言えないのは、むしろちょうどいいかもしれない。



