これから飛行機で向かう先は、アメリカのミネソタ州。

カナダとの国境に接した、夏でもとても涼しい州だ。

森と湖の情景が美しいらしい。

冬はアメリカでも屈指の豪雪地帯で、子どもを外に出したらそれだけで児童虐待の罪に問われるような、そんな土地柄だという。


ミネソタ州は、銃社会のアメリカの中で最も安全な州とも呼ばれている。

州の中枢機能を担うのは、ミシシッピ川を挟んだ双子都市のセントポールとミネアポリス。

清潔で美しい町だそうだ。


七月半ばに、ホームステイに向けたオリエンテーションがあって、ミネソタ州について説明を受けた。

アメリカの一般家庭での習慣だとかマナーだとか、一ヶ月のホームステイに必要な基本的なあれこれも説明された。


一緒にホームステイに行くメンバーと、そこで初めて知り合った。

総勢十五人。

大半は中学生で、高校生はわたしともう一人だけ。


もう一人の高校生である一つ年下の男の子は、屈託のない笑顔でわたしにあいさつをした。


「初めまして。竜也って呼んでください。おれ、英語は全然話せないので、役に立たない度合いで言ったら中学生と大差ないと思いますけど、よろしくお願いします」

「わたしも話せないよ。英語のテストでの成績はともかく、英会話は全然」

「ですよね。でも、たぶんおれたちがリーダー的なことやらされると思うんで、腹をくくっちゃいましょう」