わたし以外の全員が部活や委員会との掛け持ちで忙しそうだった。

話し合いが終わると、部長の尾崎が真っ先に部室を飛び出していった。

顔と名前を知らなかった別のクラスの二人も続いて出ていって、部室にはわたしと上田が残される。


上田は相変わらず放送部との掛け持ちだ。

今日は練習も当番もないらしいけれど。


「お疲れさま。蒼さん、今日はもう帰るだけ?」

「そうだけど」

「少し時間を取ってもらうこと、できない? 三十分くらい、そこに座っててもらうだけなんだけど」

「どうして?」


上田は一つ深呼吸をしてから言った。


「描かせてもらえないかな? 横顔を描きたい。部誌の表紙にしたいなって」


ゾッとした。

三十分間もじっと見つめられなければならないなんて、怖い。

キモチワルイ。

イヤだ。


わたしは美しくない。

太った体もニキビだらけの肌も、前髪とはメガネで隠した表情も。

顔立ちだって、たぶん、自分の理想ほどには美しくないんだと思う。

わたしはきっと醜い。


「描かないで」

「気に障った?」

「見てほしくない」


上田が息をつくのが聞こえた。

ため息なのか笑ったのか、どっちだったんだろう?