ふさいだ気分のまま過ごして、四月も終わりが見え始めた放課後だった。
尾崎が文芸部員に招集をかけた。
「ゴールデンウィーク明けに、最初の文芸部誌の製本したいと思う。それまでに原稿を書いてくること」
文芸部誌の春号の内容について話し合うため、わたしたちは文芸部室に集まった。
総勢五人。
話し合うというほどのこともなかった。
テーマを決めて競作しようか、という案もチラッと出たけれど、誰がどんなもの書くのか、まだよくわかっていない。
最初は好きなものを持ち寄ろうということになった。
挿し絵を描く上田からリクエストがあった。
「清書する前のものでいいから、早めに原稿を見せてもらえないかな? やっぱり実際に読んだ上で描きたいんだ」
了解、と尾崎が答えた。
「ついでにさ、上田、誤字脱字や言葉の間違いのチェックもやってよ」
「仕事が増えるなあ。いいよ。放送部での本読みで、正確な日本語表記には日ごろからなじみがあるしね」
「サンキュー、助かるよ」
上田は油絵が得意だけれど、マンガも描けなくはないらしい。
でも、今回は表紙と挿し絵を描いて、編集や校正まで請け負うことになるから、自分の原稿を上げる余裕はない。
「自分のオリジナルを描くのは、部員が増えて仕事の分担が楽になってからだね」
上田はそう言った。



