健康診断があって以来、クラスの女子は体形のことや美容のことを話題にするようになった。
「やせたい。ダイエットしたい。でも、甘いもの、めっちゃ食べたい!」
「どうせ肉がつくなら、尾崎さんが理想だよね」
「わかるー! 尾崎さん、どこでブラ買ってるの? ていうか、何カップ?」
尾崎はあけっぴろげだった。
「F75。でも、ここまでデカいと、おばさんみたいなデザインしか売ってないんだよ」
「じゃあ、バストサイズは一メートル近くあるんだ。巨乳!」
「っつっても、あたし、ほかもけっこう肉が付いてるから」
「尾崎さんのカラダはそれがいいんじゃん! くびれてて、お尻もあって!」
「まーね。家系なんだわ、これ。姉貴のほうがすっげーの。妹のあたしから見てもヤバい」
教室の空気は、中学時代よりマシだ。
悪口や陰口は誰も言わない。
でも、わたしはその空気にも付いていけない。
ひとみも尾崎も教室の真ん中にいる。
わたしは隅っこにいる。
ほっといてくれればいいのに、ひとみも尾崎もときどき、わざわざわたしのところまで話しに来る。
ニキビだらけの顔を見ないでほしい。
太ったことは気にしている。
でも、一緒になってダイエットの話なんてできない。
わたしはこの体が嫌いでキモチワルくて、傷付けたいし捨て去りたい。
楽しいおしゃべりの話題になんかできない。



