「好きにすれば」


いいよとも言えないし拒絶もできないわたしは、中途半端な言葉を吐いて歩き出す。

隣というには離れた位置で、上田も歩き出した。


不毛な妄想をする。

これがまともな青春ドラマなら、この場面を智絵が目撃してしまうんだ。

智絵は勘違いをして、「身を引かなきゃ」だなんて、陰で泣く。

最後には誤解が解けて、わたしと智絵は仲直りができる。


ありふれたストーリーを想像して、そんな小説が書けるもんかと思う。

甘酸っぱい学園ものの青春ドラマなんか、わたしは書かない。

書けないよ、絶対に。

学校っていうこんな世界、大嫌いなんだから。


上田は無言だった。

自分のクラスのところで「じゃあ」と言っただけだ。

話すわけでもないなら、隣に並ぶ必要もなかっただろうに。


その日の放課後、尾崎が待ち受ける文芸部室に行ったわたしは、入部届に名前を書いた。

突進してくる尾崎のハグを全力で回避して、家路に就いた。