もともと部活をするつもりはなかった。

そんな余裕がないことは自分でもわかっていた。

時間的な余裕もないし、それ以上に心の余裕がなくて、わたしはいつだって不安定だ。

部活に入れば、人間関係をいい形に維持しなければならない。

わたしにはその能力がない。


チラシを見る。

尾崎の手書きらしい。

文芸部の活動は、部誌を作るための臨時の話し合いがときどき入る程度。

縛りの少ない部活だ。

掛け持ちOKとのこと。


尾崎は図書委員だ。

図書室で会って声を掛けられたのが、尾崎と話をした最初だった。


日山高校は蔵書数が多いし、今年と来年は図書室と書庫の整理整頓を徹底的にやることが決まっている。

図書委員はカウンターの当番以外にもあれこれ忙しいと、オリエンテーションのときに聞いた。

運動部や吹奏楽部との掛け持ちは厳しいらしい。


人間関係の希薄な部だとしても、やっぱり、どこかの部に所属するということ自体が面倒くさかった。

人と関わりを持ちたくない。

だって、人も、人と人の関係性も、あっけなく壊れてしまうものだから。

わたしはきっと壊すことしかできないから。


でも、尾崎は、わざわざわたしの小説を読んだ上で入部のチラシを持ってきた。

それを無視したら、回り回って智絵を傷付けてしまうんじゃないか。

そんな気がしてしまった。