尾崎は胸をそらした。

制服のカッターシャツがパツパツに引っ張られる。

尾崎は、後ろ手に隠していたチラシをわたしに差し出した。


「文芸部、入ってよ。ここ何年か、部員不足で閉鎖されてたらしいんだけど、あたしはやりたいんだ。復活させるの。だから今、部員を集めてる」

「何でわたしに?」

「そりゃもちろん、小説が書けるって聞いたから」

「誰から?」

「ホームページ、やってるでしょ? あのペンネーム、きみだって聞いたんだよ。人づてにさ」


わたしはピンときた。


一昨日、わたしのサイトの掲示板で少し話した相手が、智絵と同じ学校の人だと名乗った。

その人のつてで、別のゲストがホームページのカウンターを回していた。

掲示板にも足跡が残っていた。

名前も素性もわからなかったけれど、同じ県内の人だという情報だけはあった。


掲示板で話をして、智絵が学校に顔を出したと知って、わたしは安心した。

わたしがいなくても智絵は大丈夫なんだ。

よかった、と思った。

智絵は、裏切り者のわたしのことなんか忘れて、楽しい気持ちを思い出してほしい。

後ろめたさなんて感じなくていいから。