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尾崎という名の彼女は、文系特進クラスでもよく目立つ存在だった。
派手な格好をしているわけではない。
染めていない黒髪は腰まで長く、背が高くて、びっくりするほどグラマラスな体形。
強気で明るい。
人を惹き付ける何かがある。
その尾崎が休み時間、わたしに話し掛けてきた。
ちょっと驚いたし、ハッキリ言って迷惑にも感じた。
尾崎はいきなりわたしに訊いた。
「小説、書けるんでしょ? 書くの、好きなんでしょ?」
わたしは顔を上げた。
尾崎はニッと笑った。
「やっとこっち向いたね」
「やっとって?」
「あいさつとかは返してくれるけど、人の顔を見ないじゃん」
わたしは視線が嫌いだった。
面と向き合うのはもちろんのこと、鏡のカメラも嫌いだ。
日中、顔を上げずに過ごしている。
ため息をついて、わたしは尾崎に訊いた。
「何か用?」
「だから、小説の話だよ。書くのも読むのも好きなんでしょ?」
「別に」
読書のほうともかく、小説を書く話は、人前でするつもりはなかった。
智絵とわたしだけの秘密にしたかった。
わたしは唇を噛んだ。



