ひとりぼっちってのは別にいいんだ。
自分から選んだことだから。
何ともいえないイヤな気分になったのは、劣等感のせいだ。
置いていかれている。
わたしが学校という世界を拒んで暗闇に沈み込んでいる間に、ひとみも雅樹も光の中を走って走って、ずっと遠くまで、うんと前のほうまで行ってしまった。
平田先生と話をしたひとみは、目を輝かせていた。
「よーし、数学、頑張る! 平田先生って結婚してるのかな?」
「は?」
ひとみは声をひそめて、嬉しそうに秘密を打ち明けた。
「内緒だよ。あたしね、先生のこと好きになっちゃうんだ。若くてカッコいい先生じゃなくて、おじさんみたいな人」
「え。何で?」
「何でだろ? わかんないけど、好きなの。中二のときも中三のときもそうだったんだ。平田先生はたぶん三年間ここにいるって言ってたから、安心した」
ひとみは頬を赤くして笑っていた。
小柄ではあっても、バランスよく肉付いた体は大人びている。
誰なんだろうこの人、と思ってしまった。
わたしだけじゃない。
ひとみも変わったんだ。



