ひとみは夢中になって話し込んでいた。
わたしは何もすることがなくて、少し離れて、ひとみと平田先生を見ていた。
噂話が耳に飛び込んできた。
理系特進クラスの男子が数人、ぼそぼそとささやき交わしていたんだ。
「あの子だよ。入試の成績がトップだったって噂のある子」
「うちのクラスの委員長が、実は二番だったってやつ?」
「そう。入学式で壇上に立ったのは委員長だったけど、本当の主席の子は下宿生で、引っ越しだ手続きだ何だかんだで忙しいから、委員長が代役を務めたんだって」
「下宿生って時点で彼かと思ったけど、本人が否定したもんね。あいつ、何で男なんだろうってくらい、きれいな顔してるよな」
「木場山から来た下宿生って、二人ともヤバいってことだよな。塾ではおれも上位だったのに、高校に来てみたら化け物がいたって感じだ」
ぐゎん、と頭を殴られたような気分だった。
ひとみがそこまで成績優秀だなんて知らなかったし、雅樹もやっぱり最初から目立っている。
そして、わたしが「木場山中の三羽烏」ではないことをハッキリと知らされた。
今さらだけれど。自分でもわかっているつもりだったのに。
いや、三羽烏の中に加えられても、わたしだけ見劣りがする。
まともに学校行事に参加しない、暗くて不愛想なひとりぼっち。
そんなわたしが、ひとみや雅樹と同じくくりに入れるはずがない。



