「お前は確か、遠藤が亡くなった時に、その力に目覚めたんだよな?」
「うん。」
「多分それは、なんかの理由で遠藤がお前に貸した力だと思う。」
「え……」
少し間を開けて怜斗が言う。
「近い将来、必然的にその力が役に立つ日が来るってことだ。」
「………」
こんなSFみたいな力が必要になる?それこそ、最悪の場合なんじゃないの?
「……怜斗は、いつその力が目覚めたの?」
「俺は……」
そこまで聞いて、私はハッとした。私の場合に春歌が亡くなった時に力が目覚めたんなら、怜斗も相当辛い過去を経験している……?しまった、大失態だ。余計な事を……
「別にそんなことねぇけど。」
「え?」
「お前が今思ってた事。余計な事聞いたって。」
「あ……」
「俺も、中学の時に幼馴染が事故で死んだんだ。」
「……っ」
怜斗は、一つ一つの出来事を噛み締めるように、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「斎藤凌久、っていってな。サッカーが上手くて、明るい、良い奴だったよ。」
「うん……」
「けど、中2の秋……信号無視で走ってきた車に轢かれてあいつは……っ……」
「…………」
私はそっと、怜斗の背中に手を当てた。
「その時だ。俺が人の心を読めるようになったのは。」
「そっか。……辛かったよね。」
「正直、絶望したし、学校も行く気になれなかった。けど、いつまでも止まってはいられねぇしな……」
本当に、強いんだな。怜斗は。
「まぁ今は、お前の身に何が起こるのかを探らねぇとな。」
「あ…そうか……」
「あ…そうかってお前、今はお前の事が最優先だろ。」
「ふふっ。忘れてた。」
はぁー、と深くため息をついて怜斗が苦笑する。
「まぁとりあえず早く帰ってなんかあったら俺に言うようにしてくれ。」
「いや、まだ午後の授業残ってるからね!?」
「あー、そかそか。」

午後の授業を終わらせて、連絡手段も確保出来たところで、私達は無事に、家に帰ったのだった。