「そうやって、真っ直ぐにお前を愛しているから……でも、お前は返さなかっただろう?壊してしまうのが怖くて、避けたんだろう?それじゃあ、ダメだ」


「……」


「愛してやれ。愛しているのなら、その思いの丈のまま、ぶつけてやれ。曖昧な態度だと、互いに苦しむだけだぞ」


存外、まともな助言をする吊戯。


年の功と言うやつか。


「―兄さん、」


「ん?」


優しい声で、答えた吊戯。


「まだ、間に合うかな……」


そう尋ねてきた弦刃に、


「止まってくれていると思うよ。知佳の妹だからな。優しくて、強くて、きっと、お前が案じているよりも、あの子は弱くないんだ」


だから、無理して守らなくていいんだと、吊戯は続けた。


「っ、行ってくる」


バッ、と、立ち上がった弦刃。


「あ、おいっ、通帳……」


引き止める前に出ていかれたんで、それは、吊戯に渡すことにした。


「?なんだこれ」


「歩に渡された、例の通帳。給料の半分が入るようになって……「いや、そりゃ、違うみてぇだぞ」……は?」


即座に通帳を開いた吊戯は、ふっと笑って。


「なんだ。弦刃のほうが、ベタ惚れじゃん」


と、嬉しそうに笑ったのだ。


「?、どういう?」


「これ、俺だからわかることなんだがな」


吊戯はお茶を煽って、知佳はそれをのぞき込む。


けれど見てみても、特に引っかかる所はない。


「なんなんだ?」


再度、首を傾げる。


すると、吊戯はどうしようもない弟に向けてか、呆れ笑った。


そして、言った。


「こりゃ、給料全額だ」と。