峯田知佳(チカ)。
―……女みたいな名前だと言われるけど、男だから。
そこは注意しててね。
俺のかわいい妹、歩はよく、"あゆむ”と呼ばれる。
だから、男みたいだと言われるけど……本当の呼び方は、"あゆみ”。
大抵、最初に、誰もが『あゆむ』と呼ぶけどね。
そんな歩は俺が大事に、大事に育ててきた大切な妹。
だから、傷つくのは許せないんだよ。
話を聞く限り、弦はちゃんと歩を愛している。
ただ、愛し方がわからない。
どこまで愛することが、許されるのか。
そう、悩んでる。
自分の女なんだから、どこまでも愛せばいいのに。
何を躊躇っているんだか。
「……で、歩を泣かせた責任、取ってもらおうか」
ニッコリと微笑みかけると、呼び出した弦は顔を引き攣らせた。
「どうして、歩が泣くんですか?」
俺の部屋。
不思議そうに首をかしげた弦の頭を、思いっきり新聞紙を丸めたやつでぶっ叩く。
「いっ……」
声にならない叫びを上げた弦。
「お前、アホか」
「っ、何するんですか?」
「お前、女心に疎すぎ!」
「……」
「どこの世界に金だけ渡されて喜ぶ女がいんだよ!」
「……俺の周り、ゴロゴロといます」
「てめぇの生きてる世界と一緒にすんな!」
ダメだ。こいつの場合、生きてきた世界が悪い。