「今すぐ、ここのバイトはやめな」


「えっ」


「で、俺のとこに戻っといで」


「……」


さっきは、認めてくれるみたいなことを言っていたのに。


「一人暮らしでもいーよ。でも、バイトはダメ」


お兄ちゃんはいつだって、私を危険から遠ざけようとする。


「でも、働かないと―……」


一人暮らしはできない、そういった私に差し出された通帳。


「え?」


「弦刃から」


受け取りみると、確かに弦刃の通帳。


中にはありえない額が入ってて、目を見開く。


「半分の給料が入るようになってるから、それで生活しろと。会社以外で働くな、それが、弦刃からの伝言」


「えぇ!?」


一体、なんなんだ。


「私、弦刃と別れたんだよ?」


「知ってる。弦刃も出ていかれた時点で、そういう事だと認識しているらしい」


「じゃあ、どうして―……」


理解できない。


普通、他人に渡す?自分の通帳を。


「さあな。あ、あと、これ」


手の上に落とされた、それ。


「桐江って……印鑑!?」


本当に、弦刃は何を考えてるの?


「生活の足しにしろって意味だろ」


「いやいやいや、それにしても、使えるわけないじゃん!」


「使ってやれ。じゃねーと、今度はカードを送り付けてきやがる」


「〜〜っ、私がお兄ちゃんと住めば、バイトも辞められるし、お金も使わなくて済む?」


「……まぁ、なー」


「じゃあ、そうする!だから、これは兄ちゃんがもってて!」


こんなもの、私にどうしろって言うの?


私をどうしたいの。弦刃。