仁香にしては良いことを言う


私はそうでしょうそうでしょうと頷きながら、右横の五月をちらりと見た


「決まりました」


「了解。安井くんは決まった?」


「あ、はい」



そんなやり取りを見ていた仁香が「じゃ店員さん呼ぶねー」とベルを鳴らす


「あいよろ」


ピンポーン____



それぞれが思い思いのものを注文して間もなく料理が運ばれてくると


せっせと出来立ての料理を口に運びながら

話題はもうすぐ彼らにやってくる夏休みのことへと切り替わった




「いいなー夏休み。仁香にはありません」

「私にもない」


社会人2人がうつろ気な目で悲しい告白をするので、若い男子たちは憐みの目を向ける


「したっぱなので、秋に取ります」

そんな仁香の言葉に頷きながら、私は空を見上げた



「......夏も一日くらい有給取ろうかなー」

「取ろう取ろう。学生諸君はさ、夏休みどっかいくの」



その言葉に反応したのは、先ほどまでほぼ無口だった五月だ


「特には」



すると安井が何か気になることでもあるのか、おずおずと口を開いた


「でもクラスの子たちの間で、泊りで海に行こうって話でてるって......ちょっと聞いたんだけど......。火野くんはそういうの参加するのかなって思ってた......」



うわーなにそのパリピ計画


私が言わないでいたことをさらに上回る感想が、仁香の口からスルスルスルスルと出てくる


「えーめちゃぱりぴー。泊りで海まじ高校生えっちだねぇ!」