「あ、ご、ごめん。なんかふらっとして」


「......大丈夫ですか?無理に運動し過ぎたかもしれない。ちょっと休みましょう」


「うん.....普段運動しないから、ははは。ありがとう支えてくれて。なんかごめんね」




恥ずかしい



ちょっと運動して急に倒れそうになるなんて



「ほんとごめん.....ははは......」

五月に心配をかけてしまった私は、俯いて苦笑いする



「2階に観戦ベンチがあるので、とりあえずそこまで歩けますか」


「うん、大丈夫!ありがとう」



先程のような変な感覚はもうない


気丈に頷くと、私たちは2階へと続く階段の方へ歩き出した





それにしても驚いた


何だったのだろう




ふらっとしただけじゃない



走馬灯のように色々とフラッシュバックしたのだが、ひとつも身に覚えがない




あれはただの幻覚?


けれどおかしな点がある




自分がなぜ吹奏楽部に入ったのか、全く思い出せないのだ



先程の幻覚が本当の記憶だとしたら、仁香に誘われた?


____そうだっけ?

____いつ?



人生が変わるような大事なキッカケを忘れるだろうか




小学生の頃はバスケ


高校生は吹奏楽部



中学は?


中学は何部だったんだっけ?



バスケ部だったし

吹奏楽部でもあった気がする



そんなバカな


自分が2人いるわけじゃないのだから




でもどっち?


何でそんなことも思い出せないの?


思い出せないというより、今まで考えたこともなかった気がする

あとで仁香に聞いてみよう




そう決意する頃には、体育館の2階に到着していて


私は五月に促され、体育館をぐるりと囲む観戦ベンチに腰掛けた