いったい今はどこに向かっているのだろうか



2人並んで校内を歩きながら疑問に思いつつ

「五月くん本当にモテるんだね」

おばさんくさい冷やかしを入れる



「一緒に歩いてると女の子たちの視線がすっごい痛いよ」

「しんどいですか?」



もちろん非常にしんどい

しかし思いがけず心配されるので、そういう意味で言ったのではないと首を振った


「ううん、まぁ視線は気になるけど、それより羨ましいって意味!」



五月は困ったように薄く微笑む

「俺はだいぶしんどいですけどね」

「そうなんだ......」



一生共感できまいイケメンの悩み


「贅沢な悩みじゃんー。いいなーイケメン男子高校生。羨ましいー」

おばさんが言いそうなコメントを連発すると、五月が「はいはい」と会話を流して笑う



その反応が

なんだか嬉しかった



「うわー勝者のヨユーね」

「違います」


そこで五月が足を止める



「体育館に行こうと思うんですけど、いいですか」


「......?ええ」


なるほど

この足は体育館へと向かっていたのか



五月は私の反応に頷き、「こっちです」と案内してくれる


「今は吹奏楽部が演奏してると思うんですけど」



その言葉の通り

耳を覚ますとブラスバンドの音が遠くから聞こえてくるのに気がついた