早足で歩く廊下


.......周りの視線が痛い



「3組の火野くんが女の人の手首掴んで歩いてる!」

「誰?え、大学生?」

「年上の彼女かもよ!」

「うそ〜お姉さんであって欲しい」




大学生でもないし

年上の彼女でもないし

姉でもない



私は一体.......


脳内に浮かんだ「オムライスおばさん」というワードをかき消して、自分の手首をガッチリと掴む手を引き剥がした



「あの、そんな掴まなくてもついて行きますんで.......」

「あ、すいません」

「いやいや」


というより手首を掴まれていることによる視線が痛すぎるわ


解放された手首を今度は自分の手でガッチリと握りながら、彼の横を先ほどよりはマシな思いで歩き出した



「友達の付き合いできたんですか?」


先程の説明を覚えていたのか、五月は横目でこちらを見て尋ねる



私は食い気味で頷いた

「そうなの!2年1組に弟がいる友達がいて、その子に誘われて来たの。今その友達は2年1組にいるはずなんだけど」

「そうですか」



そこで会話が途切れる


引かれるのを恐れてつい誤解を解くような説明をしてしまった私は、少し反省して正直に話すことにした


「でも、ただ誘われただけなら来なかったかも。もしかしたら五月くんがいると思ったから、二つ返事で行くことを決めちゃったのよ」