______五月が私のところにやってきた



先ほどまで茶髪ロングのカツラをかぶっていた髪を手で直しながら、こちらに向かってくる


女子高生の視線を一気に引き受けているが、そんなことはお構いなしのようだ



「五月くん、いいの?着替えちゃって」


「はい。来るなんて、知りませんでした」


「そうだよね、ごめんね急に。ちょっと友達の付き合いで偶然......」



ギクシャクとした会話を交わす私たちの元に、先程の可愛い女子高生が遮るように介入する


「五月のお姉様ですか?」

「いえ、そうじゃないんですけど」

「違うんですか?とにかく五月くんも持ち場に戻って」



呆れたように指示をする彼女に対し、五月は一瞬返答に迷いを見せるも、何かを決意したように顔を上げた



「悪い、ちょっと離れる」

「え?」

「え?」



次の瞬間、彼に手首を掴まれ強制的に教室の外に連行される



うわっ!力つよ!


ていうか

「ちょっと!いいの?」


「はい」



そう頷く顔は、何故だか微塵も迷いがなくて


私はつい納得してしまう



「ちょっと五月!」



彼は自分のクラスを振り返ると、愕然として言葉を失う女子高生に


「悪い辻元、また戻る!」

そう声をかけたのだった